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「俺にはお前の捕手はつとまりそうにない。他をあたってくれ。
選抜おめでとう、だそうだ」
そんなこと、言ってねぇ!
「つまりは…応援してるってことだろう」
勝手に人の伝言を意訳した監督に全力で突っ込むも、誰に言い訳するわけにもいかず、教室内で健二は一人身悶えた。
「あいつがそんなことを?」
「ああ」
「馬鹿なやつ。捕手なんて俺の球が受けれればそれでいい。人形だってかまわない。それ以上ごちゃごちゃ言ってくる捕手なんていらない」
誰に言っているのか、やけにはっきりとした声が聞こえて、健二は苦笑した。
傲慢にさえ聞こえるほど凄い自信だ。それが才能と練習に裏付けられたものだと健二は知っている。それくらいの自信がなければきっと上には行けないのだろう。
「また、お前は…!」
「じゃあ、監督、先に戻ってます」
逃げるように足音が遠ざかっていく。あっという間に聞こえなくなった。
「あいつ……なんとかならんもんかな。他の生徒に示しがつかんぞ」
監督のぼやきの後に、足音がゆっくり遠ざかっていく。別の教室に向かったようだ。足音が聞こえなくなったのを確認して健二は身繕いを再開した。
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