目覚めた後で

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「お前に押し付けるようなことではないな。しかしだ、お前は誰よりも野球が好きで今まで努力してきたんだろう。何故今更やめる?それだけ教えてくれないか」 「……来年受験だから予備校に行くんです。だから野球やってる暇は俺にはないんです」  予想していた質問に対して健二は卒なく答えた。監督は健二から目をそらずことなく、言葉を続けた。 「希望はK大だったな。お前の今の成績なら十分だろう。両立は可能なはずだ」  まだ想定内の質問だ。 「絶対大丈夫でもないでしょう。できる限り不安なところは除いておきたいんです」  K大医学部は難関だと言われている。いくら普段の定期試験がよくとも、気を抜けば受験に失敗する可能性は大いにある。  それに最近は健二の母親があからさまに大学受験のことを持ち出してくるようになった。夫が医者で有名大学卒であるということで息子にもその道に進んでほしいのだろう。母親は息子の将来を心配していた。どうにか母親を安心させてやりたい。  その思いは嘘ではないはずなのに、健二の胸は重苦しいままだ。そんなこと言えば、きっと相棒はまた健二に呆れるだろう。くだらないと一蹴する姿が目に浮ぶようだ。  現実に言われたわけでもないのに、胸が詰まった。     
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