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彼女が立ち上がり、痛む額を擦っていると突然玄関を強く叩きつける音が部屋に響いた。ドアの外では男が何か喚いているようだ。酔っ払いや変質者の類かと思ったが、どうやら大家の声のようだった。
どうしたのだろう、さっきの悲鳴と何か関係があるのか……忍び足で玄関に近づき、恐る恐る玄関のドアスコープから外を覗いてみる。
……そこにはやはり大家が立っていた。普段の柔和な顔つきはそこにはなく、怒りの形相でこちらを睨みつけている。そして大家の顔は血だらけだった。左手が左目を覆う形で顔を隠しているが、今もドクドクと手の隙間からは真っ赤な血が流れ続けている。ドアスコープに近づいたことで、大家が何と喚いているのか聞こえた。大家はこう言っていた。
「あんたが転んだせいで左目が見えなくなった、どうしてくれるんだ…!」
怖くなって女性はドアから離れた。
"なぜ自分が転んだことを知っているのか"、そして"なぜそれで大家の目が見えなくなるのか"……ふとその原因を思いついた彼女は、自分の嫌な予感が外れて欲しいと願いながらも洗面所へと向かった。
相変わらず、自動照明ですぐに煌々と部屋全体が照らされる。入居以来切ったことはなく、スイッチの場所もわからない。彼女は部屋のブレーカーを直接落としてみた。
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