クジラの夢

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五年前、家族で父方の祖父母宅に里帰りしたときの話だ。  F県のO市にある祖父母宅には、父の姉に当たる伯母夫婦と、その子供であるC美ちゃんが同居している。  C美ちゃんは私と同い年で、当時十一才だった。 その時にはもう、自分のスマホを持っていた。 十一歳だった私たちは、田舎での手軽な暇つぶしとして、スマホで遊ぶことにした。 「これ、最近ハマっててさ」  そう言ってC美ちゃんはスマホを見せてくれた。 『クジラの夢』という名前のゲームだ。 「招待制で、誰かに招待してもらわないと入れないんだ」  C美ちゃんは得意げだった。 ほかのスマホゲームで知り合った人に招待してもらったんだ、と言っていた。  登録したユーザーは様々な心理テストに答えたあと、その結果に沿ったミッションを出題されるらしい。 そして一定数のミッションをクリアすると、特別なミッションが与えられるそうだ。 「変わったゲームだね」  そう思った原因はもう二つあった。 ゲーム内でほかのユーザーと交流する手段がない。 さらにゲームマスターなる人物がいて、たくさんのミッションをクリアした人には直接声をかけてくるらしい。 「なんて言ってくるの?」 「分かんないけど」  C美ちゃんはちょっと悔しそうだった。 「でも、そこ行くまでやるからさ。分かったら教えてあげるね」  スマホを持っているというだけでも羨ましいのに、そこまで熱中できるゲームがあるなんて、と私は思った。 きっと面白いんだろう。 もしスマホを持っていたら、C美に頼んで招待してもらいたかった。
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