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一日目。
お母さんは虫が嫌い。
理由を聞いたら、あしが4本より多かったらダメだって。家にいるのは、お父さんとお母さんと、わたしと、そして猫のあかね。みんなみんな、手と足を足せば、4本だ。
外ではうるさいくらいに、セミが鳴いている。
2年くらい前までは、わたしもセミを取っていた。虫取りは今も好き。わたしの部屋には、チョウやトンボをひょうほんにしたものがある。
お母さんは、虫がきらいだから、わたしの部屋に入るときは、それを見ないようにしている。止まっていてもダメなものはダメらしい。
「お母さんっ、わたし、虫取り行ってくるねー」
玄関先でスニーカーをはきながら、ろうかの向こう側。居間にいるお母さんに呼びかける。
「もの好きね。あなた、女の子でしょ」
そう返された。
3年になってから、「女の子でしょ」と言われることが多くなった。たしかに、わたしは女の子だ。どうきゅうせいは、もう虫取りなんて行かない。女の子だけであつまって、電車でまちに出かけてアイスを食べたり、服をながめたりしている。麦わら帽子と、シャツに半ズボン、スニーカーは泥だらけ。そんな虫取り少年のようなかっこうは、わたしくらいだ。
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