二日目

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「お昼も食べていいか」 「そうめんでよければ」 「この季節はそうなるよな」  タツヤはぎょうぎよく、くつをそろえて、やけにきょろきょろしながら、ろうかへと足をふみ入れる。 「どうしたの」 「な、なにがっ」 「きょろきょろしてる」 「べつに」 「タツヤおかしい」 「おかしくねえよ」  くすぐったい会話だ。 「お母さーん、今日のお昼、タツヤも一緒に食べるってー。いいよねー?」  居間で洗たくものをたたんでいるお母さんに呼びかけた。 「あら、そう。じゃあ、多めにゆでとくわね」 「おじゃまします」  わたしの背中から、そろりと出てきて、タツヤはやけに静かなあいさつをする。「はいよー」と返事をするお母さんは、少しにやついていた。 「こっちこっち」  階段に上がりながら手招きすると、タツヤはびくっと肩をはね上がらせた。思わずこっちまでびっくりしてしまう。 「どうしたの」 「いや、居間じゃないのかって――」 「前にも入ったことあるでしょ」 「そりゃそうだけどさ」  前っていうのは、たしか小学生に上がりたてかそれくらい。  そのころと今とはちがう。そうとでも言いたげなタツヤのたいど。クーラーがきいていない、ねつのこもったろうか。じっとりと汗ばんだシャツが、肌にくっついていくのを感じた。――じれったいなあ。  わたしは階段を下りて、下でまごつくタツヤの手を引いた。ふたりの手が汗でぬるりとすべった。もう一度、しっかりとたぐりよせて、ぎゅっとつかむ。――なんでだろう。少しだけ、息がつまるように感じた。暑さでまどろんだまぶたが、はっと開くのと同時に、タツヤがごくりとのどを動かしたのが見えた。
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