小さな鳥居

　それで、誰がどんな風にゴミを捨ててるのかも気になるしで、警察とかが監視カメラを設置してくれたら良いのにって、私もずっと思ってたんですけど。
　でもなかなか個人でそんな事頼むの、出来ませんよね。

　たぶん、だから近くの家の人がせめてゴミ捨てを止めさせよう思って、鳥居を立てたんだと思います。
　でも、ぜんぜん効果が無かったみたいで。
　鳥居が立ってもゴミは毎日捨てられてたんです。

　あの事故が起こる日までは。

　事故は、左ハンドルの外国車が起こしたものでした。
　スピードの出しすぎでカーブを曲がりきれなかったらしくて、田んぼに向かって、飛び込んでしまったみたいで。

　事故直後に見に行った人が言うには、素人目でも解る高級車なのに、横転した車の窓から二個くらい、レジ袋に詰め込まれたゴミが転がり出てて、それがアンバランスで妙に印象に残ったそうです。

　乗っていたのは中年の日本人男性で、ゴミ袋からこぼれたコーヒーの空き缶が、ブレーキの間に挟まった事が原因じゃないかって言われてます。
　死亡事故だったんで、本当のところはどうだか解らないですけど。

　不思議な事に、道路に残った車のスリップ痕、鳥居と鳥居の間を綺麗に抜けるようにして田んぼに向かってるんですよね。
　あれから、道路にゴミが捨てられることは無くなりました。