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昼休み、いつものように仲のいい友人と昼食をとっていたときに私は気づいた。
「あれ?お昼それだけ?」
友人の手元にあるのは、購買近くの自販機に売ってあるブラック缶コーヒーだけ。
それ以外はコンビニの袋すらなく、私は思わず友人を二度見してしまった。
「それだけじゃお腹もたないよ?ほら、私の卵焼きあげるからさ」
「いいの、食べたら眠たくなっちゃうから………」
そう言って、友人はどこか思い詰めたような顔で言うとブラック缶コーヒーを一気に煽る。
顔をしかめながら飲むそれは、全く美味しくなさそうで私が自分用で買った牛乳を渡すと友人はフルフルと首を横に振った。
「飲みなよ、ブラックコーヒー飲めないって言ってたじゃん」
「ダメよ、牛乳なんて飲んだら余計に眠たくなるじゃない」
「寝てもいいじゃん、次の授業は古典だよ?」
「ダメなの!だって、寝たら……寝たらアイツが来ちゃうじゃない!」
「アイツ?」
さっきから友人の言っている意味が分からなくて、思わず首を傾げると友人は青白い顔をしながらもポツポツと話始めた。
「アイツが来るのは、決まって私が昼寝をしている時なのよ………」
アイツが現れるようになったのは、ここ最近の事。
身体の大きさは普通なのに、顔が異様に大きいアイツは巨大な刃物を持って友人を追いかけてくるのだとか。
アイツの夢を見るのは決まって、昼寝をしている時だけで最初は気持ちの悪い夢としか思っていなかったのに一度アイツに夢の中で腕を切られたら、起きたときに夢の中で切られた場所と同じ箇所に傷が出来ていた。
それ以来、怖くなってなるべく昼寝をしないようにわざと昼食を抜いたり嫌いなブラックコーヒーを飲んだりして寝ないようにしているらしい………。
「そんなことって………」
「アイツね、最近ほんの少しウトウトしそうになった時だけでも気配がするの………
きっと、次に昼寝をしてしまったら私はアイツに殺されてしまうんだわ………!」
そう言って、友人はミントタブレットを大量に手のひらに出すと口の中に全て入れたのだった………。
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