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「押し入れねぇ、真っ暗な空間は果たして一体何が潜んでいたのかしらね」
クスクスと笑いながら私の怪談を読みつつ、将軍を膝に乗せてその背中を撫でる密。
あれから密が試行錯誤を重ねた結果、無事に将軍が押し入れから出てきてくれた。スマホ?何か画面にヒビが入っていたけどこれ修理いくらかかるかが気になる………。
「そういえば昔、自分だけの空間が欲しくて押し入れに本とかお菓子とか懐中電灯持ち込んで自分だけの秘密基地なんてやってたなぁ」
「あら可愛いわね、そんな時があったんだ」
「まあねーあの頃は姉さんが部屋独占して入りづらかったからこっちは押し入れ独占してやるって意気込んでたよ」
小学生から高校生まで、とにかく姉が出ていくまで押し入れは私の小さな秘密基地だった。
暗い暗い押し入れで怪談本を読み漁って暗いから今にも背後から何か出てくるんじゃないかと、ゾクゾクしながら読んでいたっけ?
「そういえばあの怪談本好きだったなぁ、あの作者さんの名前は確か………あれ?誰だったかなあ」
「ここにあるの?」
「うん、でもボロボロで本棚じゃないところに閉まってあるんだけどね
とにかくさ、本当にすごいコワイ怪談ばかり書く人で私が怪談作家を目指すようになった憧れの人なんだ」
確か、そのホラー作家は女性だったことだけは覚えている。
だけど名前がどうしても思い出せないから今度探しておかないとね。
一つの物語が終わったのと同時に、謎が増える。
食事はまだまだ用意しなければならないようだ……。
75食目、完食。
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