第二章 -11- 代償

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 見たところラグナは怪我などはしていないようだ。ラキエルは先ほどの経緯をどう説明すべきか悩んでから、順を追って話し始めた。教会の帰りにミーナと出会ったこと。屋敷が燃えたという知らせを受けた後、突然ローティアが現れたこと。ローティアが魔術と思わしき力を使って転移していったこと。すべて話し終えると、ラグナは考え込むように小さく唸った。 「状況は分かった。この火事もローティアの仕業で間違いない。屋敷を中心に、魔力を封じる結界を張っておいたが、屋敷に火が回る直前に強い力で結界を破壊された」 「ラグナの結界を破ったのか……」 「ああ」  それはつまり、並大抵の力ではないということだろう。  同じように神の恩寵を授かった者か、上位の悪魔と契約をした者か。  シシリアが結界を破壊したとは考えにくい。ならば、転移の魔術を使役したローティアの可能性が高かった。 「さて、と。どうするよ?」  焼けた屋敷とラキエルを交互に見つめ、ラグナは問いかけた。 「どうするもない。シシリア達を追う。仮にローティアが悪魔と取引をしたのなら、見過ごせない」 「それは天使としての意見か?」  引っかかるような問いかけに、ラキエルは不愉快そうにラグナを見やった。  ラキエルはもう、天の秩序を従順に守る天使ではない。悪魔と対立関係にある天使だが、天を裏切った今のラキエルに、神の僕として悪魔を裁く道理はないのだ。  しかし、天を裏切ったとしても、ラキエルは翼を黒く染め神を冒涜する存在になり下がったつもりもなかった。     
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