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第三章 -14- 闇を照らす者
静かな夜が更け、ラキエルは火の番をしながら眠るラグナとシシリアを一瞥した。
パチパチと火の粉を散らして赤々と燃える炎が照らすのは、少し離れたところで休んでいるシシリアとラグナだった。
シシリアはラキエルが貸し与えた白い法衣の外套を頭まで被り、漆黒の大地に横たわっている。眠れているのかは定かではない。時折すすり泣きに似た声が零れていたので、あまり眠れてはいないだろう。ラグナは自身の漆黒の外套を被り、木を背に座りながら目を閉じている。
静かな夜明けが訪れた。儚げな黎明が東より顔を覗かせ、漆黒の森を照らしていく。枝葉の合間より光が差し込み、ラグナは眩しそう眉を潜めた。
「朝か……」
少しばかり冷える朝露を纏った清々しい空気を吸って吐き出し、ラグナは腕を伸ばした後に金色の瞳を開いた。
三角耳の風変わりな帽子をとるとぼさぼさとした顎のラインまで伸びた鳶色の髪をかき回す。
ラグナは辺りを見回し、シシリアに声をかけた。
「シシリア、起きろ」
シシリアは身じろぎ一つせずに沈黙したままだ。
眠る女性に近づくのはラグナも戸惑うのか、少しばかり迷った様子で声をかけ続けたが、シシリアが起きだす気配はない。
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