135人が本棚に入れています
本棚に追加
すぐ目と鼻の先、手を伸ばせば門に触れられそうな場所まで来て、ラキエルは後ろを顧みた。ラグナとともに門を潜れば、脱出劇は成功だ。しかし、肝心のラグナが追ってくる気配が無い。慌てて闇の中に浮かぶ光を探す。
「ラグナ?」
月の光を失った宵闇の中、白銀の杖の先に灯る光は容易く見つかった。しかし光は、ラグナがいたはずの上空ではなく、門より少し離れた場所にある。光は、不自然な勢いで空の下へと向かっていた。
ラキエルの表情がさっと青ざめる。
逃げなければという焦燥感も忘れ、光の方へ飛んだ。
「……まさか」
いくらラグナと言えども、光を的に一斉射撃されては避けられるわけ無いだろう。それくらい、考えればすぐに判る事だ。だが、ラグナも遊び半分でそれをやったわけではないだろう。もしかしたら彼の場合、遊び半分なのかもしれないけれど。それでも、ラグナが目立つ行動を始めてから、ラキエルには一本の矢も飛んでこなかった。当たり前と言えば当たり前だが、その分、目立つラグナには倍の矢が飛んだだろう。危険な状況にも関わらず、ラグナはあえて的になり続けた。恐らく、彼なりに光を失い迷うラキエルを守ろうとしてくれたのだろう。
あまりにらしくないラグナの行動に違和感を覚えながらも、ラキエルは失墜していく光を追った。
「ラグナ!」
最初のコメントを投稿しよう!