第一章 -5- 堕天

4/15
前へ
/314ページ
次へ
 すぐ目と鼻の先、手を伸ばせば門に触れられそうな場所まで来て、ラキエルは後ろを顧みた。ラグナとともに門を潜れば、脱出劇は成功だ。しかし、肝心のラグナが追ってくる気配が無い。慌てて闇の中に浮かぶ光を探す。 「ラグナ?」  月の光を失った宵闇の中、白銀の杖の先に灯る光は容易く見つかった。しかし光は、ラグナがいたはずの上空ではなく、門より少し離れた場所にある。光は、不自然な勢いで空の下へと向かっていた。  ラキエルの表情がさっと青ざめる。  逃げなければという焦燥感も忘れ、光の方へ飛んだ。 「……まさか」  いくらラグナと言えども、光を的に一斉射撃されては避けられるわけ無いだろう。それくらい、考えればすぐに判る事だ。だが、ラグナも遊び半分でそれをやったわけではないだろう。もしかしたら彼の場合、遊び半分なのかもしれないけれど。それでも、ラグナが目立つ行動を始めてから、ラキエルには一本の矢も飛んでこなかった。当たり前と言えば当たり前だが、その分、目立つラグナには倍の矢が飛んだだろう。危険な状況にも関わらず、ラグナはあえて的になり続けた。恐らく、彼なりに光を失い迷うラキエルを守ろうとしてくれたのだろう。  あまりにらしくないラグナの行動に違和感を覚えながらも、ラキエルは失墜していく光を追った。 「ラグナ!」     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加