第一章 -5- 堕天

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 恐らく翼を射られたのだろう。ラグナはぐったりとしていて、羽根を動かす素振りを見せない。たとえ彼の背に三枚の翼があろうとも、一枚が動かなくなるだけで、簡単に飛ぶ力を失う。翼は対で存在するもの。どちらか一方に負担が寄れば、当然均衡は崩壊する。それは三枚だとしても、同じ事。  ラグナは逃げ切る自信があったのだろう。けれど、あのような目立つ飛び方をすれば、追っ手もさぞ目標を定めやすかったに違いない。 「自業自得だ」  生きろと言ったのは、ラグナだと言うのに。  己が自由になるために人助けをして、ラキエルを利用したはずだったのに。もう少しで彼の望みは達成される。それなのに、彼はまだ、ラキエルを救おうと言うのだろうか。  何のために。何の理由で、彼はラキエルに力を貸すのだろう。ラグナに利益など一つだって無いだろうに。それなのに、今ラグナがしている行動は、彼を噂でしか知らないラキエルにとっては奇行としか言いようの無いものだ。  まるで、サリエルが無償の寵愛をラグナに与えたような――。 「あんたも御節介が好きだな」  乾いた笑い声が聞こえて、ラキエルは不愉快そうに顔を顰めた。     
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