第一章 -5- 堕天

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『ごめんなさい。これは、貴方ではなくフィーオに言わねばならない事』 「お力になれず、申し訳ない」 『いいえ。貴方には迷惑ばかりかけてしまって、ごめんなさい。聞いてくれて、ありがとう』  サリエルがこの場所へ来たのは、最後の懺悔をするためだった。  誰かに聞いてもらうつもりなど無かった。  だが、偶然にもディエルが居合わせ、自然と全てを告げてしまっていた。  それでどうにかなるわけではないのに、サリエルは少しばかり心が軽くなったような気がした。  サリエルの言葉を最後に、再び沈黙が満ちる。  サリエルはそっと、この聖堂にぽつりと存在する棺へと歩み寄った。  漆黒に輝く黒曜石の棺は、重々しい姿とは裏腹に、永久に眠る命を抱いていた。  棺の中に亡骸はない。だが、その中には確かに、目覚めぬ魂が存在している。異例の自由を手にした魂は、ただ眠り続ける。黒い棺の中で、誰にも知られずに。  棺の上には、瑞々しく真っ白な花が飾られていた。それに気付き、サリエルはまだ蕾の花を一輪手に取る。己の魔力を与えると、花は蕾を開き、繊細な美しさをサリエルに見せた。 『貴方が花を……?』  サリエルと老天使しか知らぬであろうこの場所に添えられた花。     
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