序章

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「我が名はアルヴェリア。十二の神に愛され、呪われし者。ラフィーナ、私と共に来い」  白き天使アルヴェリアは、ラフィーナに手を差し出した。  彼は背の翼を広げ、大きく羽ばたかす。漆黒の世界に、純白の翼が広がる。その眩さに、ラフィーナは瞳を細めた。  白い法衣の袖より伸びる手は、ラフィーナを救うもの。  けれど差し出されたその手は、ラフィーナの一言で去る。生と死の狭間、絶望に生きるか、安らぎ死ぬか。極端な選択肢に足された、予期せぬ道。堕天使と共に自由を得る。それはラフィーナの考えた事の無い道だ。  先に待ち受けるのは絶望かもしれない。騙され死ぬのかもしれない。希望があるのもしれない。  けれど、死に逝った父と弟、民達は何と思うだろう。彼らの元へ逝くのを待っているだろうか。それともラフィーナの生を望むだろうか。しかし、それに答えるのは他の誰でもなくラフィーナ自身だ。  迷うラフィーナを横目に、アルヴェリアが動いた。翼を広げ、瓦礫の地を蹴り空へと浮かぶ。  次第に遠ざかる腕を見つめ、ラフィーナは無意識のうちに立ち上がっていた。たった一度の機会、捨ててしまうにはあまりにも惜しい気がして。ラフィーナは縋りつく思いでその腕を掴み取った。     
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