第一章 -6- 罪と罰

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「思いきった事するな。死んだら意味ねぇじゃん」  目線だけ掴まれた腕の方へ向けると、ラグナが苦々しそうに笑っていた。  あまり顔色が優れないところを見ると、ラグナも無事な状態ではないようだ。しかし、全身から力が抜けてぼんやりとしているラキエルよりは、ほんの少しだけ元気そうでもあった。  ラキエルが何も答えないでいると、ラグナはふと視線を下げて薄く瞳を細めた。しばらく二人、無言のまま落ちていく空を眺める。静かな空気が流れ、風の音、冷たい夜の空気が身に染みていく。  妙な沈黙を終わらせたのは、ラグナの方だった。 「なあ、空の下には何があると思う?」 「……雲」  はっきりしない頭で、思い浮かぶものを呟いてみる。 「違うだろ」 「じゃあ、土」  ラグナは呆れたを通り越して、哀れむような目でラキエルを見た。  なぜそんな視線を向けられるのか理解できず、ラキエルはラグナを軽く睨んだ。 「夢が無ぇのな。空の下には、自由があるんだよ」  無邪気な笑顔で、ラグナは言う。     
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