第一章 -6- 罪と罰

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 琥珀色の瞳で、ただ真っ直ぐに大地を見つめる彼は、酷く嬉しそうな、だけどどこか悲しそうな笑みを浮かべていた。ラグナを知らないラキエルに、彼の心情を推し量るのは難しい。けれど今は、ラグナが何を思っているのか解る気がした。  願いを成就できた喜びと、目的を失った喪失感。  逃げる事に夢中すぎて、きっと、その先を考えてはいなかった。勿論、それはラキエルも同じだ。生きるために逃げるしかなかったラキエルは、逃げた先がどんな世界なのかも知らない。知らないから不安で、憂いを隠せない。  何も知らない世界で、これから――。 「これからどーすんの?」  思考を読まれているのではないかと疑いたくなるほど、絶妙なタイミングでラグナが問いかけてきた。 「……分からない」 「考えてなかったのか?」  意地の悪い声で、ラグナは更に追い討ちをかける。  ラキエルは眉を寄せて、僅かに滲んだ手のひらの汗を、胸部の服と共に握りこんだ。見栄を張らねばならない状況ではないのに。答える言葉が見つからない事に、焦りを感じた。けれど焦りを悟られたくないと思い、動揺する心を押し込めて、ラキエルは低く呟く。 「行く場所なんて」  どこにもない。そう続けようとした。だが、その言葉を聞いていないのか、聞かない振りをしているのか、ラグナはラキエルの言葉をさも当然のように遮った。 「明確な予定が無いならさ、もう少しオレに付き合ってみない?」 「何故?」     
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