第一章 -6- 罪と罰

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 もう、共に行動する理由は無い。ラグナは逃げ切る事ができたのだから。危険を冒してまで追われる身であるラキエルに、同行する必要は無いはずだ。彼の願いは、自由になりたいという望みは達成された。目的を果たすためにラキエルを利用しただけのラグナにとって、もう、ラキエルは何の価値も無い。  思っていることが直に顔に出てしまっているラキエルは、己のそれに気付かず、問い返す。 「だってさー、一人じゃ寂しくね?」  折角一緒に逃げたんだから、もう少し遊ぼうぜ。と付け足して、ラグナは口角を上げた。  一人が寂しいのなら、サリエルを連れればよかったのに。そう言おうとして、ラキエルは開いた唇を、小さな溜息だけ零して閉じた。ラグナに遠慮しての配慮ではない。  目的もなく、一人で追われ続けなくてはいけないラキエルは、未来に不安を感じていた。唯一ラキエルを理解してくれていたディエルさえも裏切り、堕天したラキエルに明るい未来などあるはずが無い。一人きり、生きるために、逃げる人生。それはもしかしたら、死よりも尚苦しいのではないかと思ってしまった。いっそ逃げずに、素直に滅びの女神の御許へと逝った方が良かったのではないだろうかと。  孤独には慣れていた。  一人でいる事が当たり前だったし、無理をしてまで他人に理解されたいとも思わなかった。でもいつかきっと、世界がラキエルを受け入れてくれる。そう思いながら、生きてきた。  しかし、世界がラキエルを受け入れてくれる日など、もう来ないだろう。     
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