第一章 -6- 罪と罰

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 天を裏切り、本当に罪を犯したラキエルに、世界は背を向ける。完全な孤独に震えながら、天の使者から逃げなければいけない。それは希望に満ち溢れた未来ではない。けれどそれを共有してくれる人がいてくれるのならば。少しは、生きる喜びを知ることが出来るのかもしれない。  だから、ラグナの言葉を嬉しく思った。  一人は寂しい。  孤独に慣れていても、それを苦痛と感じなかった事は一度も無い。いつだって寂しさや心細さを感じていた。けれどラキエルは寂しさを消す方法を知らなかったし、孤独な世界から抜け出す術も無かった。  そこに差し伸べられた手を払えるほど、ラキエルは天邪鬼ではない。  例え悪魔の腕でも、今の状況では取りかねなかった。  しかし、手を差し伸べるのは悪魔でも天使でもない。自由だけを望む、堕天使だ。 「……そうだな。一人は、寂しい」  掠れた声で、そう言うだけで精一杯だった。  それ以上何か言おうとすれば、同時に乾いた瞳の奥から熱いものが押し寄せてきそうだったから。遠ざかる空に視線を向けて、ラグナを見ないようにした。見なくても、ラグナが笑っているのは予想できた。それが意地の悪い笑みではない事も分かっていた。 「決まりなっ! どーせだから楽しくやろうぜ、ラキ」 「ラキエルだ」 「んだよ。細かい事は気にすんなって。エルまで呼んでたら、天使みたいじゃねーか」     
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