第一章 -6- 罪と罰

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 ひとしきり笑った後、ラキエルは元より、ラグナも口を閉じる。  急に静寂が戻り、どちらも何かを切り出そうと思うのに、頭の中に言葉が浮かばない。  空から落ちて、大地へとゆっくりと降りていく。  心地よい静寂に身を委ね、ラキエルは瞳を閉じた。  このまま死んでも、構わない気がした。それほどに、心の中は穏やかで、意識が少しずつ霞んでいく。背に感じていた激痛も、痛みを超えて何も感じなくなっていた。ああ、このまま眠りたいと思い、意識を闇に向ける。  しかし、ラキエルが完全に意識を飛ばす前に、ラグナの声が聞こえ意識を留める。 「なぁ、お前にとって、女神の恩寵は重いか?」 「考えた事……ない」  今にも消え入りそうな声で、ラキエルは答える。何を聞かれているのかも、よく分からなかった。ただ、眠ろうとする意識の片隅で、ラグナの何処か寂しそうな声が聞こえた気がした。その声が今まで聞いたものとは違うようで、答えなければいけないと思った。でなければ、彼が消えてしまうような、そんな予感がした。 「そっか。……オレには重いよ。重すぎて、空も飛べない」  ラグナは視線を空へと向けた。     
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