第一章 -6- 罪と罰

10/17
前へ
/314ページ
次へ
 硬質な回廊に無機質な音を響かせて、ディエルは塔の最上階へと歩みを進める。長い螺旋階段を一段一段踏みしめるたびに、身体から気力が抜けていくようだった。落ち窪んだ瞳には、絶望の二文字が色濃く刻まれている。  静か過ぎる道が、暗く沈む心を更に落ち込ませ、同時に苛立ちを呼ぶ。  前へ進む事に恐れと怒りを感じながら、それでも振り返れない己を呪った。  戻る事などできない。もう、何処にも逃げ道などありはしないのだから。  長い螺旋階段の終着点まで来て、ディエルはようやく足を止めた。  目の前には、冷たく厚い、神秘的ですらある白い石の扉が一つ。それはディエルの訪問を待ち構えていたかのように、ゆっくりと開かれた。  アーチ型の門を潜り、部屋へと一歩を踏み出す。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加