第一章 -6- 罪と罰

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 怒りと失意に震え、腹の底から引き絞るような低音で言葉を吐き出した。  声と態度から、ディエルが怒りを感じていると気付いているだろうに、フィーオは事も無げにただ微笑みの仮面を貼り付けている。それが更に、ディエルの行き場の無い怒りを増長させていると知りながら。 「私がやった方が効率が良いと判断した。二度も、アルヴェリアの時のような失態を犯すわけにはいかない。……貴方ではあの二人に情けをかけてしまうでしょう? かつて、アルヴェリアをみすみす逃がしてしまったように」  空気が氷りついた。  フィーオは切れ長の瞳を細め、跪くディエルを見下ろす。冷酷に、残酷に、罪を攻め立てる。お前の甘さが、混乱を招いたのだと。災厄の元凶を世に放ったのは、他の誰でもなくディエルだと、フィーオの涼しげな目元が訴える。  聞こえもしないはずの雑音がディエルの脳裏を駆け巡る。  悪魔を籠から出した愚か者よ、呪われるがいい。  永久に罪を背負い、贖罪に生きるがいい。  それがお前に残された唯一の償いなのだと。  二度も同じ過ちを繰り返すな。  空気が重い。全身から熱が引いていく。苦しい、とディエルは心の内で呟いた。  軽い眩暈に揺れそうになる身体を気力で留め、ディエルは再び視線を大理石の床へ落とした。     
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