第一章 -6- 罪と罰

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 憐れな天使が、どこかで泣いている。夢と希望を胸に抱き、それが叶わぬと誰よりも深く知ってしまっているから、より濃い絶望の淵へと身を落とす。己の心を殺すことでしか自己を保てなかった悲しい魂が、傷つけられた痛みに嘆きの血を流す。救いを求め、与えられぬ優しい腕をまた、夢見て。  誰よりも神の近くに存在する彼は、夢と現実の狭間で揺れる。 (ああ、可哀相に)  どうしようもなく哀れで、存在そのものが悲しくて、心の内で涙を零した。  ――天に坐す我らが父よ、願わくば彼らに安らぎを与え給え。
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