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第二章 -7- 流れ行く者
揺れて流れて、どこまでも。
互いの手をそっと掴み合って、二人は一緒に歩き続けた。後ろを振り返る事はせずに、ただ、真っ直ぐ前だけを見据えて、少しずつ、自分達の道を築いていく。戻る場所の無い二人は、世界の終わりまで歩き続ける。
時折、果て無き荒野に心が砕け、足を止める事もあった。
過去を振り返り、罪悪感に押し潰されそうになった事もあった。
戻る事の出来ないぎりぎりの緊迫感が、心を深く沈め、眠れぬ夜のあまりの静けさに怯える日もあった。
黎明の訪れない暗い世界に取り残されたような気がして、恐怖に身を震わせる事もあった。
だけど、お互いの手の温もりが前へ進む力と希望を与えてくれた。時と共に日は巡り、明けない夜は無い。寂しさを感じながらも、一人ではないと言う支えが互いの傷を癒してくれた。
流れて逃げて、どこまでも行けるのだと、そう信じていた。
彼はただ、自由になりたかっただけだった。
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