第二章 -7- 流れ行く者

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「ああ、悪い。頭の上に死神がいたんでな、払ってやったんだ」 「ばーか、んなもんいてたまるか。あー……知ってるか? 見えないものが見える奴って、ここがいかれてるらしいぜ?」  ラグナは己の頭部を人差し指でつんつんと軽く突くようにして示す。 「普通にいかれた奴に言われてもな」 「んだよ、可愛くねー奴」 「可愛くなくて結構だ」  男が可愛いなどといわれてもうすら寒いだけだ。ましてや、ラキエルは自分がお世辞にも可愛いといえない性分なのは自分自身よく分かっている。今更そんな事で怒るほど、単純ではない。  これ以上相手になってやるものか。  半ば意固地になって、ラキエルはラグナに背を向けた。 「おーい、ラキちゃん? 何処行くんだよ」 「どこか。ずっとこの場所にいるわけにもいかない」 「どこかって、当てはあるのか? 闇雲に歩き回りたいってなら、止めねぇけど」  どこか含みのある言葉を聞いて、ラキエルは進もうと揺らいだ体の動きを止めた。  彼には当てがあるのだろうか。  まさか。あるはずがない。地上へ降りたのは、ラグナとて初めての事だろう。見知らぬ大地、空は遠く、辺りは暗い雑木林。行く場所など、どこにあるのだろうか。     
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