第二章 -7- 流れ行く者

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 頼りたくはないと、心の中で反抗する気持ちがあるものの、頼るものが何一つ無いこの場所ではそうも言っていられない。ぎこちない動きで、ラグナを横目に振り返る。瞳の端で捕らえたラグナの表情は、にんまりと笑みを浮かべていた。 「そうそう、素直なのが一番だぜ」 「どこか、行く場所が?」 「あるある。あんた、さっさと気絶しちまったから何も見て無いかもしれねぇけど、落ちてくる途中で小さい街を見たんだ」  あっちのほうだったか。と、ラグナは曖昧な記憶を手繰り寄せるように、どっちつかずの方角をゆらゆらと指す。はっきりしない彼の様子に、急ぐ気持ちばかりがはやる。どうするのだと、視線で答えを求めるラキエルに気付き、ラグナは腕を差し出した。 「道案内してやるから、連れて行け」 「自分で歩け」 「やだ。ずっと牢屋で寝てたてめぇと違って、こっちは疲れてんだよ。おぶれ」  いたって真剣な顔でふてぶてしい言葉を言い放つラグナに、ラキエルは脱力するのを抑え切れなかった。あからさまに呆れたという態度を見せ付けられても、ラグナは引き下がる事無く催促の言葉を投げてくる。このままでは埒が明かないと思ったラキエルは、しぶしぶラグナの手を引っ張り、とりあえず立ち上がるための力を貸す。  思ったよりも軽やかな動きで、ラグナはすんなりと立ち上がった。 「歩くのが嫌なら、飛べばいいだろう」     
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