第二章 -7- 流れ行く者

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 瞳を閉じて、嫌味ったらしく鼻で笑うラグナ。  理解したくも無い。  思わず言い返しそうになった言葉を理性で抑え、ラキエルは盛大に溜息を零した。  ここで言い合っていても、時間だけが無駄になるだけだ。不毛すぎる口論を止めるためには、多少の妥協は仕方が無い。一応、恩師でもあるわけなのだから、少しくらいの我侭は大目に見よう。それでも、これっきりだぞ、と目で訴える事は忘れない。  諦めも半分に、ラキエルはしぶしぶ頷いた。 「……今回だけだからな」 「横抱きにしてくれてもよくてよ」  ラグナに背を向けて屈もうとしたラキエルに、ラグナがにやにやと笑いながら言う。 「馬鹿が」  何が楽しくて男を横抱きにするのか。  呆れ果てているラキエルを、なぜか楽しそうにラグナは見ていた。
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