第二章 -7- 流れ行く者

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 ラキエル達が、ラグナの言う街らしきものに辿り着いたのは、陽が完全に没した宵の刻だった。民家と思わしき木造の質素な建物から、香ばしい香りが漂う。恐らく、食事の時間帯なのだろう。ラキエルには食べると言う概念が無いため、人間が食事をとる事は知識程度にしかない。一体人間は何を食べるのか、少しの興味を覚えるが、それよりも先にすべき事があった。  家々の窓から零れた光に照らされた砂利道を、少しずつ進んでいく。  ラグナが街と形容したこの場所は、あまりにも人の気配が少なかった。  小さな箱のような家に、少なからず人は生活している。けれどその数はあまりにも少なく、両手足の指で事足りる程度だ。暗く薄汚れた街の通りに活気は無く、静まり返っていた。確かに遅い時刻ではあるが、あまりにも閑寂とした空間に、ラキエルはいささか疑問を持つ。  しかし、今はそのような事を考えてはいられない。  背にかかる重み。繰り返される呼吸は薄く、やかましいとすら思っていた声が聞こえない。静かになったラグナに、ラキエルは疑問を感じなかった。  初めは、寝てしまったのだろうかと思った。     
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