第二章 -7- 流れ行く者

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 仕方が無い。ラグナはラキエルとは違い、きっと一睡もしていなかった。牢屋で十分すぎる休養を取ったラキエルに比べ、ラグナの消耗が激しいのは当然だ。だから、道案内を終えたラグナが、意識を手放しても問題は無い。  問題なのは、眠ってしまったラグナの、脇腹辺りから伝う液体。どろりとした嫌な感触。暫くは気付かなかった。黒衣に身を包み、視界も暗かったため、彼のそれに気付けなかった。いちいち大袈裟なラグナは、些細な怪我でも大騒ぎをしそうであるのに、彼は一言も言わなかった。  ただ、連れて行けと。それだけが、窮地のサイン。  黒衣に染み込み切れなかった血が服を伝い、ラキエルの指先に絡みついたのは、ラグナが静かになってしばらく経ってからだった。ようやく街の光を見つけ、歩調も早まってきた頃、不快感のあるそれの存在と理由を知った。しかし、手当てするにも、どこかで落ち着かなくてはいけない。街に入れば、宿くらいはあるだろうと踏んでいたラキエルは、寂れたこの空間に焦りを感じた。  どこへ行けばいいのだろう。  閉ざされた扉ばかりが目に付き、ラキエルの焦燥感を増長させる。  いよいよ狭い街の出口まで辿り着いたところで、ラキエルは足を止めた。     
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