第二章 -7- 流れ行く者

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「何処にいけばいる?」 「医者はもっと都の方じゃないとお目にかかれんよ。馬を使っても三日は掛かる」  苦々しそうに、朱の零れ落ちるラグナの傷口を凝視する。  どうみても、三日もつ傷ではない。瞳の閉じられた蒼白な顔は苦痛に歪み、冷たくなっている手足からは考えられないほどの脂汗を額に滲ませている。ああ、どうすればいい?  呆然とするラキエルの耳に、主人は内緒話でもするように唇を寄せてきた。  何事だと警戒をするラキエルだったが、主人が何かを伝えようとしていると気付き、主人の背にあわせてやや腰を落とした。 「あんたは信仰深いかい?」  今の状況と信仰がどう関係しているのか理解しがたい。不思議に思いながらも、ラキエルは小さく頷いた。 「……ああ」 「この村を出て西に半日行ったところに、ドルミーレという小さな村がある。……もう一度聞くが、誓って、あんたは神を信じるか?」  やけに食い下がる問いに、またも同じ答えを返す。  主人はまっすぐにラキエルの瞳を見つめた。     
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