第二章 -7- 流れ行く者

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 しかし主人の真剣な表情を見る限り、嘘を言っているようには見えない。 「俺も自分の目で見たわけじゃないから、何とも言えん……。信じる信じないはあんたの決める事だ」  ふと、言いようの無い既視感。  二択の決断を迫られ、選べるのは一つだけ。潔く諦めるか、曖昧な希望に縋るか。  そう、これはラグナの手を取った時の感覚に似ている。  あの時は、ラグナが救ってくれた。ならば、今度はラキエルがラグナを助ける番ではないだろうか。選択肢は、一つだけだ。諦めるというのは、選ばないも同じなのだから。 「……ありがとうございます。西のドルミーレに行ってみることにします」  微かでも希望の灯火があるのならば、月明かりを頼りに進むだけだ。  ドルミーレの命の巫女。その言葉を頼りに、ラキエルは礼を述べて宿を後にした。  残された主人は、突然の訪問者を無言のまま見送った。  古びて戻りの悪い扉を閉じようと足を進めたとき、主人はふと違和感を覚えた。扉に、床に、赤い血が零れている。背負われていた青年の傷口は応急手当のようなものがされていた。大量の血液が布に染みてはいたが、滴るほどではなかった。  ならば、これは……。     
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