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ラキエルの視線の先には、悠然とこちらを見下ろしている四人の天使。柱の上の窪みとも取れる空いた場所に、腰を下ろしている。皆ラキエルと同じ細身の白い法衣を纏い、左の胸元には名を記した銀の札が下がっていた。二枚の雪のように白い翼を悠々と広げ、くつろいでいる。まだ若い天使だという事が、彼らの雰囲気から感じられた。
四人の天使たちは皆、口元に微笑を浮かべている。けれどそれとは対照的に四つの双眸は、どこか蔑みの感情を孕んでいた。それは憎悪と言う言葉をも連想させる、冷たい視線だった。
「ラキちゃんは天使の癖に、卵を食べるらしいぜ。信じらんねぇな」
芝居を打つような口調で、一人がラキエルを揶揄する。
ラキエルには何が面白いのか理解できなかったが、四人の天使達は互いを見合い、くすくすと忍び笑いを零した。
笑い声が止む。先ほどラキエルに言葉を投げた天使が柱の上から腰を上げ、翼を羽ばたかせつつ舞い降りて、ラキエルに近寄った。
「なあ、本当か? ラキエル。さすが呪い児だけはあるな」
ラキエルは条件反射に後ろへ後退する。
相手にしてはいけない。何を言われても、ただ黙っていれば良い。その方が、物事が穏やかに済む。怒りを沈め口を開かなければ、彼らはそのうち去る。それまで我慢だ。そう自分に言い聞かせて、ラキエルは辛抱強く時が流れるのを待つ。
己を見下ろす天使をただ真っ直ぐに見つめ返した。
「生意気な目だな」
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