第二章 -8- 辺境の村

1/16
前へ
/314ページ
次へ

第二章 -8- 辺境の村

 冷えた石畳の道に、白い結晶がふわりと舞い落ちた。  羽根のように軽やかに、子供のように気まぐれに空で踊り、くすんだ大地を白く染めていく。  少年は髪や肩の上に雪が積もるのも気にせずに、闇の空から注ぐ白いものを見つめていた。質素な集団住居の、雨よけさえない階段の一段目に座り込み、星の見えない夜空を仰いでいる。冷えて赤みを失った柔らかい頬を、凍てついた雪がゆるやかに滑る。骨の髄まで氷りつかす冷たさの中、微かに震えながらも少年は静かに佇んでいた。  まだ幼い少年だった。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加