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ローティアは自嘲気味に微笑んだ。
彼女はローティアを哀れむあまり、気休めの言葉をくれているのだろうか。一時的な安らぎなど、望んではいないというのに。希望を持てば、その先にある残酷な現実により深く絶望するだけだ。
気休めの言葉など、笑うしかない。
「君とぼくは家族じゃない。血が繋がっていないもの」
シシリアはローティアにとって、母の次に愛すべき友達。しかし、家族にはなれない。血の繋がりは、人と人とを結ぶ最も尊いもの。友情があろうとも、それだけで家族になれるわけが無い。
だが、シシリアは本当に気休めでその言葉を言ったのだろうか。
シシリアは慈悲深く、困っている人間を放っておけない優しい少女だ。けれど、嘘だけは吐かない。たとえ、気休めの言葉だとしても。
「そうね。あなたと私のお母様は違う。だけど、あなたと私のお父様は、同じなのよ」
シシリアの言葉に、ローティアは心の中で動揺する。
「ヴェルディアおじさんが……?」
「そう」
「本当?」
おずおずと、ローティアはシシリアの蒼い瞳を覗く。
シシリアは深く頷いて、優しくローティアの頭を抱き寄せ撫ぜた。何度も何度も、母が子を慈しむように優しく。
「本当よ」
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