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氷りついたローティアの瞳が、微かに揺れた。
「今日から私がお姉ちゃん。良い?」
そう年の変わらない少女の腕の中に、ローティアの良く知る温もりが感じられた。穏やかで優しく、柔らかな温かさ。頭を撫ぜる手は小さくとも、母のそれに良く似ていた。
「大丈夫、私がいる。もう一人にはさせないよ」
ローティアの頬に、熱い何かが通り抜けた。
一滴、また一滴と、南海の瞳から悲しみが零れ落ちる。
シシリアの腕の中で、ローティアは泣いていた。母の死を認めたくないために堪えていた涙が、堰を切ったように溢れた。
白い白い悲しみが降る街で、少年は声を殺したまま泣き続けた。
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