第二章 -8- 辺境の村

11/16
前へ
/314ページ
次へ
「おはよう。僕はまあまあ眠れてるよ。姉さんこそ、具合は良い?」 「ええ、今日はとても爽やかに目が覚めたの。久しぶりに、外へ出かけようかな」  腕を伸ばす動作を添えて、シシリアは精一杯明るく微笑んだ。 「そう。外なら、庭に薔薇の蕾が開いたらしいから、後で見に行ってみる?」 「あら、咲いたのね。ミーナにも教えてあげないと。きっと喜ぶわ。そうね、お庭の水まきをしたら、教会に行こうかと思うの」  ヴェルディス家の家事をこなす手伝いの少女を思い出しながら、シシリアは窓の外をちらりと覗く。晴れ渡った青空が広がり、清々しい風が木々の葉を揺らす。温かな気温で、出かけるには良い気候だった。  しかし、嬉しそうなシシリアとは反対に、ローティアの表情が曇る。  ドルミーレの教会は、病院を兼ねている。近くの町や村に医者はおらず、ドルミーレの教会を預かる神父だけが、医者の資格と技能を有していた。そのため、遠くから神父を頼ってくる病人や怪我人が絶えない。修道女だけでは手に余る時もあり、シシリアは自ら進んで手伝いをしていた。 「……教会は、最近患者も少ないみたいだし、修道女たちで間に合ってると思う。姉さんが手伝う必要は無いよ」  寝台の隣にあるテーブルに盆を載せ、ローティアは俯きながら呟いた。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加