第二章 -8- 辺境の村

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「そうね、私のできる事なんて、限られてる。でも、遠くから頼ってきてくれる人もいるの。私は、その人たちの力になってあげたい」  シシリアは暇を見つけては教会へ行き、患者の看護や治療を手伝っている。誰かに言われたわけではなく、自主的に教会と神父の手伝いを申し出た。  だが、ローティアはそれに関して、あまり良い感情を持っていない。病人や怪我人は、病の元凶たる病原菌を運んできているかもしれない。設備が整っているわけではない教会は、床にシーツを敷き、そこに病人を横たえる時もある。衛生的にも良好とは言えず、どこか潔癖なところのあるローティアとしては、なるべく近づいては欲しくない場所なのだ。 「だからって、姉さんが一人頑張る必要は無いよ」 「うん。でも、私が居ない時は、神父様やシスター達が私の分も頑張ってる。私は、みんなの負担も減らしてあげたい」 「でも、あいつらは姉さんに頼るばっかりじゃないか。それだけじゃない。姉さんが厚意でしてる事を、奴らは金儲けに」  徐々に感情的になる弟の言葉を遮って、シシリアは諭すように優しい声を掛けた。 「ローティア。神父様は教会を維持するために寄付金が必要なの。それに、私は頼ってもらえて嬉しいのよ。私にできる事は、これくらいしかないから」 「でも……」     
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