第二章 -8- 辺境の村

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 どこか不満げなローティアに、シシリアは微笑みを向ける。 「心配してくれてるんだよね? ありがとう。私は大丈夫だから、ね」  恐らく、ローティアはシシリアの容態に気付いている。  教会に通うようになってから、不自然な疲れを感じた。深く長く眠っても、疲労は拭えず、少しずつ衰弱していく。  シシリアは弟にだけは悟られまいと振舞ってはいたが、それでも鋭いローティアの事。同じ家で住んでいるのに、ばれていないわけがない。  ローティアの気遣いは嬉しく思う。けれど、シシリアは己に与えられた生を、人の役に立てたかった。  幼い頃より、不自由な思いをしないで生きてきた。年の変わらないローティアでさえ幼くして母を失い、その前も苦しい生活を強いられてきたと言うのに、シシリアはずっと庇護されてきた。運が良かったのだと言ってしまえばそれまでだが、それでもシシリアは一人ぬるま湯の中で生きる事を良しとしなかった。  誰かが苦しんでいるのかもしれないのに、自分ひとりが幸せで良いのだろうか。  いつからか、そう考えるようになっていた。  人の役に立つ事に喜びを覚え、誰かを助けるという使命感に似た感情が芽生えた。  それは自己満足の上にある偽善なのかもしれない。     
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