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それでも、シシリアは己が役に立てる事が純粋に嬉しかった。
ローティアを不安にさせているのには心が痛むけれど、シシリアはやめるつもりはなかった。
「本当に、今日は具合が良いの。ローティアこそ、毎日遅くまで勉強して、睡眠不足になってるんじゃない? 私の事より、自分を優先しなさい」
ローティアは家にいる間、日夜分厚い参考書を片手に、机に向かっていた。彼が医者を目指しているのを、シシリアは知っている。いつかこの町にきちんとした病院をたてるのだと、幼い頃の弟は言っていた。
ヴェルディス家はいくつかの商店を持ち、また広大な土地も有していたため、働かずとも食べていく事はできた。けれど、貴族のように遊び暮らすつもりは、シシリアにもローティアにもなかった。
ローティアが自立するに至ったら、父の財産は教会への寄付と、病院の建設費に当てよう。シシリアはそう決めていた。だから、ローティアの心配事を増やさぬようにと、普段以上に快活に振舞った。
「ローティア、時にはお姉ちゃんの言う事、素直にききなさいね」
寝台の横に立つ弟の髪を引っ張り、いつからかシシリアの背を追い越した弟の頭を撫ぜる。
ローティアは気恥ずかしげに視線を逸らしたが、手を払う事はなかった。
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