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五年ほど前に母と父を同時に失い、初めて一人の寂しさを、取り残される悲しみを知った。昼夜泣き明かすシシリアの横で、ローティアはずっとシシリアを慰めようと声を掛けてくれた。当時はシシリアよりも小さかった彼は、まじないのように一つの言葉を繰り返した。
『僕がいるから、一人じゃないよ』
いつかシシリアが彼に向けて囁いたものと同じ言葉をローティアは言った。その言葉を、シシリアは今でも忘れない。
ローティアはずっと、シシリアのそばに居る。だから、シシリアもローティアと共に生きよう。ずっとずっと、世界が終わる時まで。互いを支えながら、生きていこう。
不思議と、鉛のようだった身体に生気が戻ってくるような気がした。
(――大丈夫。まだいける)
心のうちで小さく呟き、シシリアは己の両手を握った。
一日の始まりを告げる鐘の音が、教会の方より鳴り響く。
青い空に白い雲が流れて、緩やかな一日が始まろうとしていた。
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