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ヴェルディス家の屋敷は、街の小高い丘の上にあり、町まで少し歩く。教会へ向かうべく、シシリアはローティアと侍女のミーナに一言断り、家を出た。心地よい朝の空気を吸い込み、歩き出そうとしたシシリアは、隣町の方角からやってくる人を見止め、足を止めた。
白い装束を纏った青年が町の方へ歩いていた。
別に、旅人など珍しいものではない。
ただ、男の様子が、どこかおかしかった。遠目にも酷く衰弱している事が分かるほど、おぼつかない足取り。身体は揺らぎ、今にも崩れ落ちてしまいそうだった。前かがみになって歩いているので、はじめ老人かとも思った。だが、良く見れば青年の背にもう一人、黒い服を纏った誰かが背負われている。
シシリアは二人が近づくほどに、不自然な命の灯火を感じ取った。
まるで、いつ消えてもおかしくはない、燃え尽きる寸前の蝋燭の火のようだ。少しの衝撃で、容易く命は消えてしまう。
肌で感じた死の香りに、シシリアは鋭く反応した。
目の前で、命が散ってしまう。
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