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(大地母神よ……どうか、私に力をお貸し下さい)
心の中で祈りを捧げ、赤く染みた法衣の上をなぞるように触れた。
慈しむように、できるだけ優しく傷口を撫ぜる。雪の如く白い指先に、命と言う形容しがたい不完全な力が集う。シシリアの内側から、温かな光が指先を伝い零れ落ちた。光は星のように煌き、指先の触れた青年の傷口に黄金色の輝きが纏わりついていく。
苦痛に歪んでいた青年の顔が、少しだけ和らいだ気がした。
シシリアは一度手を止めて、青年の額や頬に張り付いた砂と前髪を払ってやった。
顔色が悪く、所々薄汚れてはいるが、育ちの良さそうな印象を受ける青年だった。白い法衣を着ているので、神に仕える聖職者なのだろうか。ローティアとそう変わらない年頃に見えるので、修行中の僧侶かもしれない。
「……うっ」
青年が短く呻き声を上げた。
シシリアは緊張に身を強張らせる。目を覚ますだろうか。青年の長い睫が微かに震え、大地に寝転がっていた手がぴくりと動いた。
ゆっくりと瞳が開かれる。空の方を見つめた青年の目は、切れ長でややきつい印象を受けた。黒い睫に縁取られた瞳は、紅玉のように鮮やかな深紅。
シシリアは息を呑んだ。
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