第二章 -9- 命の巫女

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 眼が、焼けるように熱い。  燃え盛る炎に焼かれているのだろうか。背の翼にも、酷い痛みと熱が暴れている。白い羽根が一枚、二枚と紅く染まっていく。同時に、瞼が熱に焼かれ、爛れて焦げていく。己の肉の焼ける臭いが鼻を突いた。熱が瞼の奥まで侵食する。見えない恐怖、拒めない熱。怒りと絶望の入り混じった涙が、閉じた瞳から止め処なく零れた。しかし、そんな涙すら嘲笑うように、灼熱の炎は瞳を焼いていく。  あまりの苦痛に叫んだ。  何度も何度も、罵りの声を上げた。  許しは請わなかった。自分は何も悪い事をしていないのだから、嘘でも媚びるような言葉は口にしない。  ただ逃げる事のできない痛みに、狂ったように叫んだ。その声が、叫びが、天に届けば良いと思った。自分の声で、自分勝手に世界を見放したお前達が、少しでも悔いれば良いと――。  頭が割れそうだ。深い憎悪が行き場をなくして、身体の内側でのた打ち回っている。声が枯れるほど叫んでも、この感情は消えない。理性が蝕まれ、狂気と言う名の闇が心に満ちていく。 「……サリエル」  無意識に名を呼び、女神の名を頂いた少女が脳裏に浮かんだ。     
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