第二章 -9- 命の巫女

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「いいえ。お困りの方を助けるのは当然の事。まだ本調子ではないでしょう? しばらく、ここで療養されていくといいわ。お連れの方も、まだ目を覚まさないようですし」  人を疑う事を知らないのだろうか。シシリアは天使のような笑みを浮かべ、見ず知らずの旅人を受け入れるという。得体の知れない部分はあるが、その申し出は今、大変ありがたかった。  ラキエルには頭の中を整理する時間が必要だろう。同時に、ラグナも世界の動向を探る必要がある。天使達の追っ手を巻きながら、ラキエルと言う荷物を背負って歩くのは、流石に骨が折れる。まずはここで、天使の力を封じる結界を張り、追っ手を巻こう。天使達も、ラグナ達が長くゲートの近くに潜んでいるとは思うまい。体力が完全に戻ったら、改めて旅立てば良い。 「悪いな……」  しおらしく答えてみれば、シシリアは「お気になさらず」と人の良い笑みを浮かべた。 「お客様なんてあまり訪れないので、この部屋も寂しがっていたところですから。どうぞ心行くままくつろいでください」  宿を提供してもらえるのは嬉しい。  だが、このシシリアと言う女の存在が引っかかる。     
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