第一章 -1- 白い牢獄

15/18
前へ
/314ページ
次へ
 隠そうとしても、目を開いている時は前髪の合間より覗いてしまう。髪の色ならば、染めてしまえば良い。顔の造形が似ているのならば、傷つけるなりして変えてしまえば良い。けれど瞳だけは、色を変える事が出来ない。どんなに厭っていても、その色彩が消える事は無いのだ。  アルヴェリアを誰よりも恨んでいるのは、ラキエルだ。  名しか知らぬ存在の為に、謂れ無き罪を問われる日々。  長い間、ラキエルは天使たちの憎悪の対象となってきた。昔はその瞳の色を揶揄される度に、精一杯反抗した。だが、アルヴェリアが存在する限り、彼らの瞳にラキエルは忌み子として映るのだ。いつしかラキエルは、反抗する気も失せていた。  思えば、彼らとて過去の悲劇への怒りを誰かにぶつけなければ、行き場の無い不安を拭えなかったのだろう。その対象に選ばれたのが、ラキエルだったというだけだ。  ラキエルさえ我慢さえしていれば、彼らも己の行為を改める時が来るだろう。今は黙っていれば良い。心を殺して耐えていれば、次期に終わる。そう信じて、ラキエルは生きてきた。  時間はかかるかもしれないが、きっとラキエルを受け入れてくれる日が来る。  鏡に映る己の顔を覗き込んで、ラキエルは頷いた。  泣き言を言ったところで、現状は変わらない。  アルヴェリアの罪が消えるその日まで、耐え抜く事が出来れば、ラキエルは解放される。その時までの辛抱だと自分に言い聞かせて、己を納得させた。  ふと、背後に人の気配を感じて振り向く。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加