第三章 -13- 月の気まぐれ

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「違う。神々の恩寵は人に奇跡の力を与える。その力は使い手次第で、善にも悪にもなる」  ラキエルの滅びの女神の恩寵を除いて、神々の恩寵はそれぞれ神々に由来した力を授けるとされている。魔力であったり、身体的な特徴や能力であったり様々だが、人を不幸にするものではない。そうラキエルは思っていた。しかし、いざシシリアの現状を目の当たりにし、その言い伝えが本当だったのかと疑問を持つ。  ラグナの言うように、神々の恩寵は呪いなのだろうか。  人の身に余る力は、災いを呼ぶのではないだろうか。  考え込むラキエルに、シシリアは更に疑問を投げかける。 「以前、ラキエルが話していた、神の恩寵を持つ人は……?」  その問いかけに、ラキエルの心臓は跳ね上がる。罪を問われているような居心地の悪さを感じるも、真っ直ぐに問いかけてくる視線を外すわけにもいかない。ラキエルは僅かな沈黙を挟み、小さく答えた。 「ラグナと……俺だ」 「え? 二人とも?」  驚きを隠せないシシリアにこくりと頷き、ラキエルは前髪をかき上げ、額を露わにした。  血のように赤い瞳が光を放つように輝いている上、額の真ん中に赤黒い痣が存在している。滅びの女神デラの愛し子としての証が、シシリアの瞳に映り込んだ。     
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