第三章 -13- 月の気まぐれ

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 どんなに繕おうと、ラキエルが滅びを呼ぶ忌み子であることに変わりない。誰もが皆、ラキエルの存在を疎ましいと感じる。ディエルやラグナが少しだけ他と違っただけだ。やはり世界は残酷で、ラキエルを拒絶するのだろう。そう、わかり切った未来から目を背けても仕方がない。シシリアから視線を外し、ラキエルは観念したように答えた。 「滅びの女神デラの恩寵だ。……まわりを巻き込み、滅びを招く……呪いだ」  言い切って、ラキエルは額の前髪を下ろした。  シシリアは驚いた表情こそ浮かべたものの、その表情は次第に悲痛なものに変化する。  悲し気に見つめられている理由もわからず、ラキエルはさらに続けた。 「世界に存在する神は十五柱。その中で唯一、恩寵を与えた者を滅ぼす力だ」  絞り出すように言葉を吐き出せば、シシリアは目を閉ざして首を横に振った。 「……とても、辛い思いをしてきたのね」  拒絶の反応を予期していたラキエルは、シシリアの一言に驚きを禁じ得なかった。 「堕天した理由は、それなの?」  痛ましげに気遣う声。拒絶を見せないシシリアに驚きながら、ラキエルは小さく頷いた。 「俺は、恩寵がもたらす災厄を消すために裁かれるはずだった。……だけど、ラグナが助けてくれた。死を受け入れていたはずの俺に、生きろと。それで、天界から逃げてきたんだ……」     
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