第三章 -13- 月の気まぐれ

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 今でも、何故ラグナがラキエルを助けたのかは分からない。ラグナの目的が自由になるというものならば、すでに彼は自由だ。ラキエルの傍にいても良いことなどないだろうに、離れる素振りを見せない。不思議だと思う反面、ラキエルにとってそれは心の支えにもなっていた。  今更改めて、何故共に行動するのかと問うこともできずにいる。  シシリアは複雑そうな表情を浮かべているラキエルに、小さく相槌を返した。 「……ドルミーレの村に悲劇が起きたのも、滅びの女神の影響なのかもしれない」  ラキエルは疼痛を覚える額の紋を思い出しながら、正直に伝えた。シシリアには知る権利がある。そして裁く権利も。  シシリアは沈痛な面持ちでラキエルを見上げた。  しかし、その青ざめた唇から非難の声が飛ぶことはなかった。 「いいえ。貴方が来ても来なくても、同じ悲劇が起こっていたわ」  悲しみの浮かぶ空色の瞳は、ラキエルを責めてはいなかった。 「ローティアとミーナを巻き込んだのは私。……私の愚かさが招いたこと。ラキエルのせいじゃない」  ゆっくりと自身にも言い聞かせるように、シシリアは呟いた。  己を責めていなければ、罪の呵責に苛まれて正気ではいられないのかもしれない。  ラキエルはシシリアの手の中の水筒が重みをもって膨らんでいることに気付くと、それを取り上げた。 「話し込んでしまってすまない。戻ろう、ラグナが待ってる」  踵を返して歩き出そうとしたラキエルは、服の裾を引っ張る力に気付き足を止めた。     
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