第一章 -2- 救いの手

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「そのまさかさ。あんたも名前くらいは聞いた事あるだろ? これが、天界と地上界を騒がせてる、かつての白き天使アルヴェリアだ」  ラキエルはアルヴェリアの名こそ知っていたが、その姿を見るのは初めてであった。ラキエルとよく似た、紅い瞳。それはラキエルの想像よりも遥かに神秘的で、けれど白に浮かぶ紅い色彩は、どこか不吉でもあった。十二の神に選ばれ、寵愛を欲しい儘にしたアルヴェリア。少し前までは、フィーオよりもなお神の近くにいた天使。 「アルヴェリアは、天使と神を裏切った。昔の偉人も今では、多くの人間や天使の命を奪い、大地へ堕天した第一級の罪人だ。それは知ってるよな?」 「ああ。でも何で」  動揺を隠し切れないラキエルは、信じられないものを見るようにラグナを見つめた。 「あんたはさ、アルヴェリアが罪を犯した理由を考えた事あるか? ……あれだけ栄光の真っ只中にいた奴が、理由も無く誰かの命を奪って、栄光の座を捨てると思うか?」  声色を落とし、落ち着いた口調でラグナは言う。  今までのおどけた態度が一変し、ラキエルは戸惑いを感じながらも、ラグナの言葉の意味を考える。  ラキエルが返事をする間もなく、再びラグナが口を開いた。     
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