第一章 -2- 救いの手

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「……俺は、どうすればいい?」  ラグナの言葉を鵜呑みにする気は無い。  けれど、もしもディエルやラグナの言葉に少しでも真実が混じっているのならば、ラキエルはどうすべきなのだろうか。  見つめた先でラグナは、冷ややかな視線をラキエルへ向けるだけだった。 「知らねぇって。決めるのはあんたであって、オレじゃない」  ラキエルは返す答えが見つからず、一文字に口を閉じる。  そんなラキエルを横目で見やり、ラグナは銀の杖を支えに立ち上がった。 「んじゃラキエル。もう一度聞くぜ? あんた本当に死ぬ気なのか?」  女神がラキエルの死を望むのならば、ラキエルは従うつもりだった。  けれど、ラキエルの死を願うのが、神ではなく天使なのだとしたら。それに従う理由は、ラキエルにはない。  ラキエルはアルヴェリアではないのだ。一度も会った事の無い堕天使の代わりに裁かれるなど馬鹿げている。恐らく、ラグナはそう言いたいのだ。  改めて死ぬ気なのかと問われ、ラキエルは困惑する。 「俺は……」  半ば諦めて、生きる事を自ら放棄していた。     
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