第一章 -2- 救いの手

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 罪を背負い生きるか、罪無く死ぬか。 「――俺は」  ラキエルは手を伸ばす。頭の中では駄目だと思う気持ちがあった。  神を信じてきたラキエルは、天への反逆が何よりも重い罪に思える。  たとえ理不尽な死だとしても、受け入れるべきだろうと、ラキエルの良心が囁く。罪を犯すよりは、死を選べ、と。  けれどそれ以上に――。 「生きたい」  生きることが罪なのだとしても、まだ死を選ぶには早すぎる。  綺麗事を並べても、死んでしまっては何の意味も無い。  だから、ラキエルは生を願う。  ゆっくりと伸びたラキエルの手は、柵の奥より差し出された救いの手を、しっかりと掴み取った。
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